日本のシーンで大きな力を発揮してきたTohji (@_tohji_) 。その音楽とビジョンで、日本のオルタナティブな才能たちを世界と結びつけようとしています。インターネット世代の誰もが知っていることがひとつあるとすれば、それは、私たちが地球上のどこにいても、共通の感情や欲求を持っているということです。音楽は、そういった感情を思い出させてくれる力強いものなのです。
私が2020年にバルセロナから東京に来たとき、日本の音楽で何が起きているのか知るために最初に勧められたのが、TohjiとGummyboyからなるデュオ、Mall BoyzのMall Tapeでした。彼らのモールや郊外というユニバース、そして90年代に影響を受けたユーロビートとトランスは、何千キロも離れて育ったにもかかわらず、私も自分のもののように感じられる要素でした。SoundCloudで生まれた、トラップとアンビエントが混ぜ合わされたような彼のラップは、世代を超えた大きな波の一つを形成しています。TohjiをTohjiたらしめる影響の源は、グローバルな世界からやってきていて、彼の願望もまたグローバルに広がっています。
Tohji はDrain Gang、Mechatok、Yeule、Palmistry、Namasenda など国際的なアーティストと頻繁にコラボレーションし、日本での公演に招待もしてきました。また、Le Makeup、Loota、Elle Teresa、Shaka Bose、E.O.U. 、など日本のアーティストとも制作を行い、 日本のシーンを国外へ接続するために、Tohjiは自身の海外公演にこれらの日本のアーティストを呼ぶこともあります。こういったグローバルな動きを柔軟にするため、Tohji は NTS のゲストでもあり、アジアのアーティスト拡散プラットフォームである Eastern Margins と協力し、音楽シーンにおいて日本と日本国外の交流がより活発になるよう動いているのです。
Tohjiの姿勢、個性的なスタイル、生き方は、彼の音楽の可能性を広げ、意味を与えています。海辺でスポーツカーに乗り、友人たちに囲まれたプールパーティー、踊りながら汗をかくタンクトップ、下着を見せるヨレヨレのパンツ(彼のブランド、Vanillaniから。)。“人生において最高な、小さく純粋で楽しい瞬間を永遠にとらえられる曲を作ってみるのはどうだろう。”
国内での活動として、Tohjiは全国ツアーを行ったり国内の主要なフェスティバルに出演するだけでなく、自身のパーティー (シークレット、またはパブリック) も主催しており、そこでは彼が好きなアーティストを呼び、パフォーマンスをファンに提供しています。ファンや他のアーティストと親しい間柄であるにもかかわらず、Tohjiは自分の音楽、創作過程、目的などを言葉で説明することはあまりありません。私は彼と数年前からパーティーで話をすることが多くなっていましたが、今回の取材ではそんな話を聞きたいとお願いしました。東京のコリアンタウン、新大久保で海鮮やスイーツを食べながら、私たちは何時間も話し込んでしまいました。
Chorareii: あなたは東京と横浜で育ちましたが、生まれはロンドンです。ロンドン、ソウル、台北…と、海外の音楽シーンとのつながりも深いですよね。日本国外に住んで、音楽を作り続けるということは考える?
Tohji: 東京と他の場所を行ったり来たりするのが好き。日本にいるだけでは落ち着かないことも多いから、海外と行き来して生活したい。
音楽アーティストにとって、日本で活動することの良さは何?
他の国を旅した後、日本には特別なアンビエントな雰囲気があって、何かエモーショナルなものがあることに気付いたんです。
俺は、大きな道路と同じような家しかない郊外出身で。同じ大きさの家がグレイの壁と共に等間隔に並んでるのを見ると、なぜかいつもエレクトロニックな音楽のフィーリングがしてくる。
音楽を作っていなかったら、何をしていたと思う?どんな職業を選んでいたと思う?
建築家になってたかもしれない。
今、ご近所の話で音楽と建築を結びつけたのは面白いですね。あなたが住んでる家はどうですか?
俺はいつも古めの家に住んできた。古い家ってなんか雰囲気があって、妙に好奇心を掻き立てられる。
ほんとうは整った居心地の良い場所に住みたいけど、綺麗に保つことができないからいつも散らかっちゃうんです。同時に色々なことに集中するのが苦手で、例えば、料理をしている最中はゴミのことは全く気にならないとか。悪い習慣なので変えたいですね。
音楽を作るときのプロセスはどうですか?
雑然としてる!パソコンはファイルだらけでなかなか整理できないし、
俺の頭の中も、色んなアイデアでいっぱいでぐちゃぐちゃです。
でも音楽を作るときも、料理を作るときも、最終的にはよく出来てるんです(笑)
なぜ、音楽なのですか?
音楽を作るのは簡単。自分一人でできる。
例えば、映画を作ろうと思えば、キャスト、スタッフ、カメラ、プロデューサーが必要になる。スケジュールを立て、撮影計画を立て、ロケハンをし、光の具合を確認して……。撮影したら編集して、リリースする会社を探して…と、何ヶ月もかかる作業だと思います。
でも、音楽は自分で作れるし、ワンクリックでリリースできる。
いま音楽をつくるプロセスについて話していますが、そのもとになるような音楽を作るために必要なビジョンや創造性についてはどう考えていますか?なぜTohjiの音楽が人々の興味を引いたと思いますか?
いい質問ですね、そんなこと考えたことなかったな。たぶん、俺の音楽はリスナーにとって他のものよりリアルに感じられるからじゃないかな。
10代の頃は、「音楽はリアルじゃない、自分には関係ない」と思っていました。ライブやクラブに行っても、「ここは自分の居場所じゃない、心の底から信じられない」という思いが常にありました。
10年ぐらい前のクラブでは、みんなニューエラの帽子をかぶって、偽アメリカ人みたいにな感じで。もし、自分が音楽を作るようになったら、そういうことはしたくないと思った。
誰かの真似をして生きていくわけにはいかなかった。俺らのために、パーソナルな何かをを作りたかった。
そのライフスタイルを実現するために音楽で有名になりたいと思っていましたか?
有名になって、音楽でお金を稼いで、そのお金で仲間のMall Boyzと一緒に楽しみたかった。
音楽をリリースしてから、東京以外の都市部からのブッキングがあって、初めてMall Boyzみんなで大阪に行きました。
東京から出たことがなかった俺らにとってはすごく大きな意味があって、「俺らの音楽がきっかけで大阪に来た、それってすごいクレイジーなことだな!」って思ったんです。このままじゃいけない、有名になってもっとお金を稼いで、みんなを食わしたいと思うようになりました。
Mall Boyz、あなたの仲間について教えてください。Tohjiという人間にとって、彼らはどれほど重要な存在ですか?
彼らはみんな最初から俺の友人です。高校を中退してから、あまり人と会ってなかったけど親しい友人は欲しいとずっと思ってました。もし彼らに出会ってなかったら、俺は今も部屋で孤独なままだったと思う。
でも、彼らが俺の心を開いてくれたから、感謝しています。
自分の音楽生活に友人たちを巻き込みたいと言ってましたが、Tohji自身はどうですか?
音楽はあなたに何を与えてくれるのでしょうか?
音楽は、俺の人生を常に変化させるものです。音楽をリリースした後、いつも自分が予想もしないようなことが起こりました。
2020年の初めには、初めての日本ツアーをして、音楽業界の人たちにも会って、物事の仕組みを理解することができた。”こうすれば、もっと大きな会場でライブができる “とか、”こういう重要な人たちと仲良くすれば、もしかしたらこれが実現できるかもしれない “とか。“こうなるかもしれない“というのは見えてきた。
けど、結局、自分としてはそれをただそのままやるのは面白くなかった。それが音楽をやっていてはじめて失意を感じたときでした。
そのために、自分でパーティーを立ち上げることにしました。カルチャーを大切にしながら、成長していきたい。
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(´。• ᵕ •。`) ♡
私はTohjiの音楽において、快楽主義的な面と、深遠な面の2つの面を見ることができます。それぞれどんなときに生まれるのでしょうか?
一人でいるときは、友人とつるんでいるときよりも深みを増す傾向にあります。それは誰にでもあることだと思う。夏に作った音楽より、冬に作った音楽の方が深くなる気がする。
季節があなたの曲に確実に影響を与えているということを感じますが、特に夏がそうですね。夏が一番好きな季節ですか?
そうですね。夏が一番好きです。夏は俺にとって最もロマンチックな季節です。みんな汗だくで、肌を見せて、朝まで街で遊んだり、夜中に川で泳いだりできる。夏は楽しみの可能性が広がると思います。
時々、嫌な思い出もあります。感傷的になって弱々しい気持ちになるんです。そんな時にあえて楽しむことでその気持ちを紛らわすことができる。だからパーティも好きです。
同じ空間で同じ音楽を聴くことで、お互いがつながっていくような感覚でパーティは楽しんでます。パフォーマーとして、観客とのつながりについてどう考えていますか?
みんな俺にエネルギーを与えてくれます。俺はショーの前は空のボトルのようだけど、ショーの後はみんなのエネルギーで満たされている感じです。
ショーは、音楽活動のなかで俺の気に入ってる部分の一つでもあって、いつも最高のパフォーマンスをできるように心がけてる。ライブでは、みんなと直接話すことができて、みんなのそれぞれの人生をより身近に感じることができると思います。
ライブは、俺たちの人生のハブのようなもので、繋がれる場所。出演者である俺が観客に何かを与えて、そしてまた観客はそれぞれの方法でそれぞれの人生を過ごす。そして次のライブではまた一緒になる。それが好きなんです。
もし、インターネットで音楽を発表するだけだったら、数字が見えるだけでリスナーとのつながりを感じることはできないと思う。ライブはよりリアルで、人を感じることができる。
音楽を作る際のプライベートな部分、スタジオでの創作活動は、あなたにとってどうですか?
俺にとって良い音楽を作ることは、石からダイヤモンドを切り出すような感じです。自分の中にすでにあるものを、正しい方法で磨けば、輝きを放つ。
最近、以前よりも音楽作りが楽しくなってきたのは勉強しているからで、それは俺にとって新しい「石」を集めるということでもある。
以前は、新しいことを学ぶことに興味がなかったんです。人と話すのも、どう思われるか分からないから気にしなかった。自分の考えだけに集中したかった。最近は、好奇心が旺盛なので、頭の中に「石」が山ほどある状態ですね。
自分の音楽について、他人の意見を聞いたり、学ぼうとするようになったんですね。それは、アーティストとして何か成長した証なのでしょうか?
精神年齢が高くなる前は、考え方が凝り固まっていたのかもしれないですね。今はもっと自然で、もっとニュートラルで、ピュアな感じがします。大人になったという感じではなく、前より自由になったという感じ。
俺は今26歳だけど、年齢のことをいつも気にする人たちが嫌です。100歳で死ぬかもしれないのに、40歳は年取ってる?とか、そんなことを考えるのは時間の無駄だと思いますね。
音楽はもちろんですが、特にライブではとてもパワフルなイメージです。それは、スーパーヒーローや戦士、スポーツ選手といった男性的な印象を受けることがあります。そのような感覚を持っているのでしょうか?
俺にとっては、スワッグが全てです。スワッグなイメージというだけで、男性的というわけではないんです。
スワッグって説明するのが難しくて、新しい男らしさを表現するということであれば、それはスワッグしています。従来の伝統的な男らしさみたいなことはスワッグではないです。
スワッグっていうのはなんか新鮮な空気とか、新しい意味を生むとか、そのクールな感覚のことです。
スワッグの大部分はパーソナルなスタイルから生まれるかと思いますが、あなたの服装や車について教えてください。
街でチューニングされたカッコいいクルマを見かけたら、ドライバーを見てほしい。大体服装がダサいんです(笑)クルマのビジュアルセンスはあっても、服装とかのスタイルにセンスが無いと全体像が見えない。
秋葉原とかで、漫画のキャラクターのコスプレをしている人をよく見ると思うけど、日本のミュージシャンも似たようなものです。シド・ヴィシャスになりきる人もいれば、他の有名人になりきる人もいる。俺はこういう誰かの真似になるような格好は絶対にしない。
俺はファッションのことはよく知らないけど、そんなシリアスなことじゃないと思う。
カジュアルな哲学のようなもので、今日は髪を結ぼうとか、ゆったりした服を着ようとか、体を隠したいとか…選択することに意味がある。今日はなぜ赤なのか、なぜ黄色なのか。
あなたの場合、なぜ青なのでしょう?青はあなたを体現する色ですか?
日本ってなんだか独特の青があると思いませんか?ロンドンやバルセロナで写真を撮ると、光の加減が違うからわかるんです。
(真っ青な空が見える写真を見せながら)
この青が、俺にとっての “東京 “なんです。俺の記憶と幼少期をつなぐものであって、俺にとって重要であり、自然で心地よいものなんです。
アーティストとしての自分を定義するものを選ぶとしたら、それはスワッグでしょうか?
スワッグもそうだと思うけど、詩人のような視点も持ってると思います。
俺はギターやピアノを弾くようなミュージシャンタイプではない。詩人として音を聴く。何かをサンプリングして、それがいい音だったら、それでいいんです。
本物のミュージシャンである友人の中には、技術的な細部にまで気を配る人もいますが、俺にとって音楽は大きな詩でしかないです。
もしあなたがスーパーヒーローだとしたら、どんな超能力を持ちたいですか?
うーん。(しばらく沈黙になる)
スーパーパワーなんていらないかも!
スーパーヒーローの孤独を想像してみてほしいんですけど。スーパーマンはたった一人しかいないんですよ、それってきっととても孤独だと思う。俺はアイアンマンのようになりたい。超能力を持っていないから自分で力を生み出すけど、それでいて人間でもある。
運命というものを信じますか?自分がミュージシャンであることには理由があると思いますが?
俺はまだこの人生において初心者です。ただこのまま続けて、どうなるか見てみたい。
自分の人生や音楽が将来どのようになるか想像したり、過去を振り返ったりすることはありますか?
来年のことを想像するくらいで、具体的な目標はないです。アイデアが浮かんだら、その段階では100%純粋なものです。その後だんだん頭の中にあった時よりも洗練されていくけど、もともとの荒いピュアさを保ちたいと思っています。
同時に、うまくいかなかったときだって、それも自分にとって日記みたいなもの。初めて作った曲は、ミキシングが下手だったけどそれはそれでそのときの自分が出ていて味があるし、必ず意味があるんです。
時々自分でも「何を聴こうかな?Tohji聴こうかな」ってくらい、自分の音楽は好きです。
あなたはいつも自分のしていることに自信がありますか?時々自分自身を疑ったり、自分が十分かどうか不安に思ったりしませんか?
登れる壁だけが俺たちにやってくる。何かうまくいかないと感じても、俺は戦っていける自信がある。死ぬことに比べたら、こんなの簡単で、大丈夫なはず!
死について考えることはありますか?
死について考えることはあまりないかな。多分、俺は楽観的な人間なんだと思います。
ただ、自分の人生を後悔したくないから常にベストな選択をすることに集中しています。
創作をすることで、自分よりも長生きできる作品を世の中に残せることもあります。自分が死んだあと、人々が自分の音楽を聴いてくれるかどうか、気になったりしますか?
俺は自分にとっていつも最高のレベルで音楽を作りたいんだけど、たとえばセックス・ピストルズを例にすると、50年後、誰も彼らのことを気にしていないと思う。もちろん、彼らのインパクトの影響は残っているかもしれないけど、結局彼らが成してきたことは、”彼らにとって”素晴らしいことだった。それが大事なことだと思うんです。
俺はただ、自分にとって最もグレイトなことをしたいだけ。生きている間に自分にとってパーフェクトで、それを楽しむことができれば、自分の音楽がどれだけ長く残るかなんて気にしてない。
音楽で一番楽しいのはライブだとおっしゃっていました。 それはまた、あなたがより生き生きと、よりみんなと繋がっていると感じられる場所でもありますか?
ライブは俺にとって最高に幸せな瞬間。
俺は会場中の空気になることができます。人間としてそこにいるけど、同時に空気にもなれる。空を飛び、空間に広がっていく。
。*:☆このインタビューが気に入ったら、CHORAREIIに寄付をしてください!。:゜☆。
(つ✧ω✧)つ
もし本当の幸せへにつながる鍵を見つけたとしたら、それは何ですか? それはあなたにとって生きる意味となるものですか?
ライブのときはいつも最高の気分だけど、それが終わるとその最高な気分は消えてしまうんです。それをまた感じたいから、音楽を作り続けているのかもしれない。
それから自分が本当に好きな音楽を作れたときは、本当に気持ちがいい。あと誰かを好きになるのも、それはとても気持ちがいい。友達同士で仲良くなることも、気持ちがいい。
人生は悲劇だ、とは言えない。そんなこと言えない。そんなことはないから。
あなたにとって、最も感動するのはどんな感覚や感情ですか?
新鮮さかな。新しいものに触れること、新しいものを見つけること。それが俺にとって最高の気分です。
つまり、新しい自分を見つけること。
どうやって新しい自分を見つけますか?
自分に勝って、過去に勝つ。立ち直ることができたら、新しい自分になれる。
国内外問わず多くのアーティストとコラボレーションしていますが、それについてはどうですか?
最近は、以前ほどコラボレーションに興味がなくて。でも友達とはコラボしたいし、みんなのことはプッシュしたい。
でもいろいろ難しそうなやつもいる。
例えば、韓国では有名になるには、「SHOW ME THE MONEY」というラップのコンテスト番組に出るしかないみたいで。ラッパーはみんなその番組に出たいから、テレビにハマるようにスタイルを変えるらしくて。韓国の俺の友達は、ソウルに面白いアンダーグラウンドのアーティスト、特にラッパーが少ないのはそのせいだと言っています。そういう意味では、韓国よりも日本の方が状況はいい。
若いアンダーグラウンドのアーティストが、日本で簡単に有名になれると思いますか?
ヨーロッパでは、仕事を持ちながら趣味で音楽を作っているアーティストがアンダーグラウンドで大成することもあると思います。けど日本では、ほとんどの人が、仕事を持つか、音楽を作り続けるかの決断を迫られます。
日本では、仕事というと、夜中まで働くこともあるし、給料も少ないし、週末は眠たいし……。若いアーティストは3、4年でメインストリームに上がれなければ、だいたいみんな音楽活動をやめちゃうと思います。
俺の友達で音楽をやっている人も、そろそろ人生の分かれ道というか、決断の時期が来ているように感じる。Mall Boyzでやったように、俺が経済的に余裕を持たせてあげれば、彼らもやっていけるかもしれない。俺らの周りにももう少し経済的な余裕を持たせてあげないといけないですね。
日本の若者は世界の音楽シーンをよく知っていると思います。 逆に日本の音楽シーンは海外で知られていますか?
今、アジア人であることが何となくクールとされる風潮があって、アジアのアーティストが欧米でブッキングされ始めています。BTSやK-POPがメインストリームになってから、海外のブッカーがアジアのアンダーグラウンドなミュージシャンにも目を向けるようになったんだと思います。まだ始まったばかりだから5年後にはまた変わっていると思うけど。
でも日本のインダストリーはデカいとも思います。Pop Yoursのフェスに出たことで、MechatokとBladeeが驚いていました。ヨーロッパでは、俺たちのようなミュージシャンがあんな大きなイベントに参加することはまずないので、ああいう大きなフェスティバルに出演するのは夢だと言っていました。俺は所謂”日本の伝統的なヒップホップ”ではない音楽を作っているのに、そこに参加することができる。それが彼らにとっては本当に驚きなんです。
ロンドンに行ってみて、ロンドンと比べても日本のシーンはぜんぜん大きいし、ファンもたくさんいることに気付きました。だから、アーティストが日本のマーケットだけに集中できる。それは良い面もあれば悪い面もある。
つまり、状況が変わる予感がすると。日本の音楽シーンと世界の他のシーンとのつながりが増えるということですか?
そう思います。だから、ヨーロッパに行くときは友だちを連れていくし、日本にはいつも海外からのアーティストを呼んでいます。
ヨーロッパとアジア、そして日本のシーンをつなぐ、まったく新しい文脈を作り出そうとしているところです。
日本のオーディエンスだけに焦点を当てた日本人アーティストの良い面と悪い面は何ですか?
日本の現代アート界には、村上隆サイドと会田誠サイドの2つの大きな流れがあって。たぶん。村上隆は、西洋の美術の文脈をすごく気にしている。欧米のアート業界で何が起こっているのかを常に把握しているので、その中で自分を正しい位置に置くような作品を常に作っています。だから彼は今、ビッグアーティストの一人ですよね。
一方で、会田誠は西洋の文脈を気にせず、本当に日本人なんです。欧米から見れば、彼のやっていることはクレイジーなHENTAIに過ぎないのかもしれない–それはそうなんだけどね(笑)
2つの見方が対立している。日本人と西洋人という文脈の感覚の違いで、俺はいつもストレスを感じています。だから、俺の次の行動は、西洋だけでなく、日本だけでなく、両方の世界の間に新しい文脈を作ること。
洋と和の音楽がより繋がる、この新しい文脈を実現するために何をすべきだと思いますか?
音楽だけでなく、すべてを表現する必要性がある。もっとビデオを作るべきですね。ビデオにはたくさんの情報が詰まってて、例えばレゲトンのビデオを見ると、音楽だけでなく、カルチャーも感じられる。
あと、日本のアーティストはもっと英語話せた方がいいと思う(笑)
まずは、世界を知って。世界をみて、で俺らのオルタナティブを作る。これが今のステップ1です。すでになんとなく世界のことは知れてきたので、そこからその新しい文脈、新しいシーンを作ろうと思っています。
あなたはいつも、浜崎あゆみというアーティストに大きなインスピレーションを受けていると言っていますね。残念ながら、男性ラッパーが女性のポップアーティストに影響を受けたと述べることはあまりないと思うので、それは嬉しいことです。彼女について教えてください。
俺は彼女の性別や音楽のジャンルについて考えたことはなくて、単純に彼女の全体の雰囲気が好きなんです。高音がすごくいいし、振り切ってる。
浜崎あゆみの2000年代の音楽は、本当に良い。彼女はその時代の象徴です。彼女は俺にとって、古き良きむかしの日本の思い出の象徴でもあります。
大きなウォーターパークに行くと、壊れたスピーカーからいつも彼女の音楽が流れてて。あとテーマパークに行って、女の子と一緒にジェットコースターに乗った時とか。ゲーセンに行ってプリクラを撮りに行ったときも彼女の音楽が流れてた。友達の家に行ったら、彼女のお母さんが聴いてた。
彼女のキラキラした、ゲスで激しい雰囲気が、そういう場所に合っているんです。もちろん彼女だけがインスピレーションってわけではないけど、俺の良い思い出をつないでくれてます。
テーマパークやウォーターパーク、プリクラなど、そういう場所で自分の音楽が流れていたら嬉しいですか?
要は、壊れたスピーカーで流れる浜崎あゆみの音楽が好きだったんです。
ショッピングモールのリバーブといっしょに聴くドレイクの音楽も好きでした。子供の頃、スポーツショップの前でよくドレイクの音楽がホールに響いて流れてたけど、それがすごく好きだった。
このような音楽の空間的な捉え方はとても面白いと思います。あなたの音楽を聴くのに最適な場所はどこですか?
俺の音楽は、車の中で聴くのが一番いいと思う。
浜崎あゆみさん以外では、どんな人がインスピレーションの源になっていますか?
もちろん、北野武。作品よりも、彼の人間が好きです。彼は巨大で、全体なんです。彼はラッパーよりもラッパーだと思う。
彼は俺にとって象徴的な人物です。日本のコメディである”お笑い”からスタートして、今でこそお笑いは日本で大流行しているけど、彼が始めた頃はアンダーグラウンドなものでした。それがたけしのおかげで大きくなった。
80年代から90年代にかけて、彼はコメディアンとしてテレビの王者でしたが、もともと彼の家は貧しく、いつも自分の周りの人々のことを気にかけてました。たけし軍団という芸人のチームを持っていて、彼らに食事や家を提供して。テレビで番組があるときは、彼らを連れてきて。
北野武は多くのルールを破った。彼はそのビジョンでエンターテインメント業界を変えた。
40代になってから、彼は映画を作り始めたんだけど。彼は、本当の日本を見せるのがうまい。日本人のライフスタイルを描いた安っぽいテレビ番組はたくさんあるけど、俺にとってあれは日本でない。北野武は、本当の日本の魂、日本の感情的な部分を撮ることができる。
ヴェネツィア国際映画祭でも受賞しています。日本と世界、2つの文脈で勝った。それがカッコいいですね。
ルールを変え、自分のビジョンを貫き、地域に還元し、本当の日本を国内外に発信する。
それが、あなたのやりたいことですか?そんな野望があるように思います !
だからこそ、俺にとってはこれからが本番だと感じてます。まだまだやらなければならないことがたくさんある。続けていけばできるようになるけど続けるというのは難しいです。夢中になって勢いでいいものを作ることはできても、それを続けたり、仲間やすべてに気を配っていくというのは難しい。活動を続ける金のことも気にしないといけないし、あと、自分への気遣いも必要です。
今の日本の音楽シーンを変えるパワーやエネルギーが自分にあると感じますか?
音楽シーンだけでなく、俺にとっては、音楽、映像、ライブなど、全体です。カルチャーですね。
そして、これからは日本だけじゃなく世界と混ざり合っていくと思います。
いまはただ、その過程を楽しんでいて、明確な目標は特にないです。
“目標”はないというけど、それって大きな目標!
それが俺の考え方で、すべての可能性は無限大だとおもってる。ポール・マッカートニーは今日も音楽を作っているわけで、決まったゴールなんてなければ限界もない。
一番大事なのは、そのプロセスを大きく楽しむことだと思う。その後に、見えてくるものがある。
今のTohjiはどんな人?
まだ途中だけど、次の次元、新しいシーンへのゲートを作りたい。たくさん種を蒔いたので、今年は仲間たちが今まで以上に頑張ってくれると期待しています。
あとまた海外のアーティストが日本に来始めています。これからの数年間は、いろいろ経験していきたい。今はまだ、門を開けたばかりだから。
。*:☆このインタビューが気に入ったら、CHORAREIIに寄付をしてください!。:゜☆。
ヽ( ⌒o⌒)人(⌒-⌒ )ノ
校正を行う: Kinuko Numano (Thank you for everything!)
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